児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

スパイになりたいハリエットのいじめ解決法

 

ハリエットは11歳。将来、作家になるのが夢で、スパイ活動(人間観察)をしては、ノートに書きつけ続けてもう15冊目になる。移動中の地下鉄内でも観察とメモを欠かさないし、ある家では、食器運搬用のリフトで室内に潜入してまでスパイ。

ところがある日、そのノートをクラスメイトに読まれてしまい、自分たちもスパイされていたと知ったクラスメイトたちの猛烈ないじめが始まった。仲良しのスポートとジェニーまで、クラス委員のマリオンの言いなりだ。孤立無援のハリエット。両親は留守がちで、ハリエットのことはあまりかまわないし、心のより所だったシッターのオール=ゴーリーも、少し前に結婚して出て行ってしまっている。

でもハリエットは、新しいノートを買って書き続けた。そこにまず自分の名前を書くと、私は私、と思えるから。それでもとうとう、学校を休んでしまうハリエット。異変に気づいた両親は、医師や校長に相談。そして、オールーゴーリーからの手紙が届く。そこには、友人を失わないためにすべき2つのことが示してあった。「あやまること」と「うそをつくこと(でも自分には真実を語ること)。」 だだっ子は卒業なさい、という激励の言葉に、息を吹き返すハリエット。担任のはからいで校内新聞の編集委員になると、思う存分書きまくる。そしてあるとき、オール=ゴーリーに言われたとおり、紙面に全面的謝罪を掲載し、仲良しの友人を取りもどしたのだった。

前半、ハリエットが書き連ねる人々の様々な事情(家庭不和、父子家庭、貧しさ、引きこもり・・・)、中盤以降、一気に転落していくいじめの構図は、リアルでこわい。その中に貫かれる、決しておもねることのないオール=ゴーリーの言動。遠慮ない物言いながらもハリエットの味方として存在する料理人。そして両親も愛情がないのではなく、動くときは動いてくれる。

このくらいのハッピーエンドが、現実的なのかもしれません。 (は)

(原書:ハーパー社)