児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

イコ トラベリング 1948ー

 

『トンネルの森 1945』の続編。

イコの13歳から26歳までが描かれる青春編は、女学校時代、早稲田大学生、紀伊国屋書店への就職、そして日本語教師としてブラジルへ渡るまでを駆け抜ける。

とはいえ、まだ何者でもなく、何をしたいのかも分からなかったイコこと角野栄子さん。英語の授業で突如、体を貫いた”ing”の響きに突き動かされ、現在進行形で生きたい!という信念を早々に持つものの、簡単には抜けない戦争への不安。戦時中の出来事がたびたび回想される。

でもイコの目にうつる世の人々は、戦争をどんどん忘れて忙しく、活気にあふれて見える。歌や映画、ドーナッツにクリスマス・・・なだれこんでくるアメリカの文化。一方、イコのように、戦争で亡くしたものを何かしら胸にもちながら生きる人とのかかわりもあって。

同級生に置いてきぼりをくう気分や恋心、親の考えへの反発・・・周囲の言動に揺れ動きながら自分の道を模索する心の内は、いつの世も変わらない青年期の姿。個性的な先生たちの描写も、その姿、ようすが目に浮かぶようで楽しいです。 (は)