児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ノーラ、12歳の秋

 

ノーラ、12歳の秋 (文学の森)

ノーラ、12歳の秋 (文学の森)

 

 アニカ・トールの日本で紹介された最初の本。実はまだ読んでいなくて、お客さんに、これはどんな内容なの、と聞かれて応えられず、あわてて読んだ。お恥ずかしい次第。

概要

主人公のノーラは12歳。親友だったサビーナは、夏休みがおわってから急によそよそしくなり、新しい友人のファニーと仲良くしている。クラスの誰からも相手にされていない太ったカーリン。この4人を軸に物語は展開する。

ノーラはサビーナともう一度仲良くなりたい。夜の街を徘徊する彼女の仲間たちと付き合うようになる。

カーリンはノーラと仲良くなりたい。ノーラがサビーナのウォークマンを隠していたところを目撃し、それをネタにしてノーラに近づく。鈍くさい彼女にも彼女なりの出し抜き方があり、暗い面がある。

サビーナは美人だが、幼い頃に父親は蒸発。美人の姉は相手のわからない妊娠をしている。姉は母を、妹は姉を思ってがんじがらめ。

ファニーは、常に勝負に勝っていたい。家は金持ちで、家政婦もいるが、ファックス越しにしか家族との会話もないような家庭。それゆえにか。

サビーナとファニーは結託し、ノーラをだしに使って、カーリンをいじめ、貶めようとする。パーティーの『告白か罰か』というおそらく王様ゲームのようなシステムを使って、カーリンを衆人環視の中で裸にしようとし、カーリンはそれっきり学校を退学していく。ノーラは責任を感じ、すべてを母親に告白する。ラストシーンで彼女はカーリンの家のドアをたたく。

感想

 登場人物はそれぞれに様々なレベルの問題を抱えており、どうすればいいかもわからずもがいている。視点はあくまでもノーラのもので、そこから見える事しか見えない。私たちはノーラと一緒に霧の中をあるくようなもどかしさを共有することになる。おそらく、思春期という時代の霧の中を。

正直、もうあの時代に戻りたいとは思わない。多かれ少なかれ似たような、どうすればいいかも、何がどうなっているかもわからぬ霧の中を手探りで歩いてきた時代を繰り返すのはつらい。と、同時に、その時代にちゃんと出口があること、取り返しがつくことが保証されているのはうらやましい。

その時にはそうは思えないけれど、10代の本当にひどいことなんていうのは、大概の場合、ちゃんと取り返しがつく。ジュブナイル小説の条件とは、「取り返しがつくこと」なのだというある人の説があって、それは私も正しいと思う。そして、この小説はジュブナイル小説だ。ただ、ノーラには今はそう思えないかもしれないけれど。そして12歳という年齢は、すでにその境目のぎりぎりなのかもしれない。