児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ペカンの木のぼったよ

 

ペカンの木のぼったよ (こどものとも傑作集)

ペカンの木のぼったよ (こどものとも傑作集)

 

 みっちゃん(女の子)とりんちゃん(男の子)は、とてもなかよし。りんちゃんは、赤ちゃんの時の病気のせいで、体もよく動かせないし、ことばもうまくしゃべれません。でも、みっちゃんのおしゃべりを一所懸命にきいてくれるので、みっちゃんはうれしくてたまらないのです。その日もペカンの木の下で寝ているりんちゃんに、途中で、5匹の猫がくっつきあって猫ザブトンになっていたことを話しました。すると、友達も集まってきて猫ザブトンごっこが始まります。そのうちみんなはペカンの木登りをはじめますが、りんちゃんも登りたそう。みんなは手を貸してりんちゃんを持ち上げようとしますが、さすがに無理。すると先生が来て、おんぶで登るのでもよいかと聞いてくれます。そしてペカンの木からの風景を楽しむことができたのです。小さなエピソードを日常の子どもたちのかかわりを描きこむことで、説得力のある楽しい日常の一コマとして、豊かに表現しているのが魅力。

お引越し

 

お引越し (福音館創作童話シリーズ)

お引越し (福音館創作童話シリーズ)

 

 1990年発行の作品を2013年にその後の話を加えて発行。「今後、お家が二つになります。」で始まる離婚物語。仲がいいと思っていた両親が、別れる中で揺れ動く小学生のレンコが主人公。だけど、これ、自立しようとしている母親のナズナの物語にも、これからの生き方を模索しているワコさん(26歳)の物語にもみえる。両親は全共闘世代、でもいざ結婚ならナズナは夫の苗字となり、自分の好きなお好み焼きの食べ方をいいだせないまま忘れていった。娘と対等に関係を結ぼうともしている。だけど、親なのに弱みをさらけ出している、というのは、子どもにとっては抑圧は低いけど。自分への責任もかかってくるかも。児童文学っぽくない雰囲気は、そうしたレンコへの依存をレンコがそれなりに応えているせいかも。離婚家庭は、当時に比べて今の方が増えているだろうけど、全教闘などの設定もあり、今の小学生にはちょっとハードル高そう、です。

キキに出会った人々 魔女の宅急便〈特別編〉

 

 「出会った」というタイトルだが、出会う前のソノさんなど、キキに関係なく脇役たちの物語と思ったほうがいい。「まわりの」くらいが正解かも。いっそ、魔女宅をつけなくても良かった気もするが、そうすると売り上げが落ちる? 影の世界からやってきた一家の秘密や、好きな人にトゲを刺すという、ちょっとめいわくな砂漠に住むサボテンのトゲコちゃんなどは面白いお話でした。

ゾウがとおる村

 

ゾウがとおる村

ゾウがとおる村

 

 ウィレンの村は、焼き畑の農業で暮らしている。だが、最近、食べるために木を焼くサイクルが早くなりすぎるとおじいさんは心肺している。ウィレンの村は、ゾウの通り道になっているが、ジャングルが少なくなってきたため、ゾウはますます村を通るようになり、農作物にも被害がでている。ウィレンのおじ、デングは、町で何かわからないが、金になる仕事をしている。そして、台風の被害で、村がたちいかなくなったところへ、石炭を掘る話をもちこんできた。村人の心はゆれる。だが、台風で亡くなった祖父の生まれた村へ、産着を届ける風習で訪れたデングおじさんとウィレンは、そこで石炭を掘りつくし、木を失ったために、廃墟となった村を見る。こんなふうにしてはいけない、でも、現実に生きるすべはない!そんな時、ウィレンは、偶然木を植えることで助成金を受けられることを知り、活路を見出していく。ちょっと図式的ともいえる展開だが、声変わりでうまく声を出せないウィレンや、今までの生き方に埃を持つおじいさん、きちんと話し合う村のようすなど、気持ちよく読める。でも、現実に被害があるのだから、助成金とか、ちゃんと効果があるのね、と感心しました。

神隠しの教室

 

神隠しの教室 (単行本図書)

神隠しの教室 (単行本図書)

 

 クラスで無視され、いたたまれなくなっている5年生の加奈。父を無くしてから懸命に仕事をして疲れている母には心配かけたくない。体が拒否反応を起こし、腹痛で保健室に保健係のバネッサと向かうと、そこは無人。気が付けば、学校中が無人だが、4年生の亮太、1年生のみはる、6年生の聖哉の5人だけになっていた。ブラジル人で、生まれた赤ん坊の子守のため、学校をやめなければならないかもという不安をかかえているバネッサ。父が単身赴任いで2年もかえってこず、生意気だといじめられている亮太、若い母親の恋人に「しつけ」として虐待をうけているみはる、そして不安定な母親にネグレクトされている聖哉、みんな現実の世界から逃げたい思いを抱えていたからここに来たのか?と不安が広がる。学校の中にあるものは現れる。だから給食は食べられる。養護教諭の小島早苗は、自分がきにかけていた子がいなくなったことに不安を感じた。そして、自分もかつていじめを受け、もう一つの学校に行ったことを思い出す。子どもたちが、漂流記もののように、なんとか暮らそうと工夫する世界と、親たちが心配するこちらの世界。なぜおこったのか、どうやったら帰ってこられるのか、というミステリータッチの展開で読ませる。気になるのは、途中、一度消える聖哉。伏線もあって、なかなかいいのだが、ラストの聖哉の解決が、もう少し母親との関係を整理して書いてあったらよかったのに、と思った。いじめのようすがちょっとあいまい、わりと解決もうまくいくなど、欠点はあるが、古い校舎が、年を経て、力を宿し、子どもたちを守るために「神隠し」をおこすというのは、ちょっと説得力があるかも。読書も「神隠しの教室」かもね。

がっこうたんけん しょうがっこうだいずかん

 

がっこうたんけん しょうがっこう  だいずかん

がっこうたんけん しょうがっこう だいずかん

 

 図鑑というより、学校の部屋(図工室、家庭科室など)を写真でとり、そこに子どもの絵を書き込んだ絵本的な造り。「どんなひとたちがいるの?」というページでは、栄養士や調理員はいても学校司書はいませんでした。親が、子どもに見せながら説明に使う本と思われるが、事前に学校見学があればそれで十分。特にストーリーがあるわけでも、説明が詳しいわけでもないので、中途半端。この時期、なんとなくプレゼントで買われるのを狙った本でしょうねぇ。どうぞ、中を見て納得できるか確かめてから買ってね!

りこうな子ども

 

りこうな子ども: アジアの昔話 (こぐまのどんどんぶんこ)

りこうな子ども: アジアの昔話 (こぐまのどんどんぶんこ)

 

 人さらいにさらわれたのに、機転を使って難を逃れる「りこうなこども」(インドネシア)。年取った父親を捨てようとした父が、息子の一言で思いとどまる「ドコ(竹かご)」。自分に化けて息子に成りすました幽霊と対決する「バラモンの若者とゆうれい」(インド)。の3作が収録。文字は大きくルビもあるが、とんちの効いた昔話なので、小学校2.3年くらいからが理解しやすいだろう。