児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ルドルフともだちひとりだち

 

ルドルフ ともだち ひとりだち (児童文学創作シリーズ)

ルドルフ ともだち ひとりだち (児童文学創作シリーズ)

 

 イッパイアッテナと気楽なノラネコ生活を続けているルドルフだが、ブルドックのデビルをやっつけた話が伝わって挑戦者が現れたり、イッパイアッテナの元飼い主の家の場所に新しい家が建てられることになったことからイッパイアッテナは飼い主が戻ってこないと悟って、それなら自分がアメリカに渡ると言いだしたりと事件が満載。その中でデビルとの友情も生まれる。だがいろいろな事件の中で、ついに故郷の岐阜のエリちゃんの元に戻ろうと決心して無事に帰還するが、そこには思いがけない事件が待ち受けていた! 新しい友人も増えてちょっと成長したルドルフの姿が見られるシリーズ2作目。迷いながらも素直なルドルフの姿はとても魅力的で、自分を重ねて気持ちよく読める作品になっている。

ルドルフとイッパイアッテナ

 

ルドルフとイッパイアッテナ

ルドルフとイッパイアッテナ

 

 1987年刊の斉藤洋氏のデビュー作だが、未だに良く読まれている。物語はクロネコの飼い猫ルドルフが、魚屋からシシャモを盗んで追われ、トラックの荷台に飛び乗ったことから始まる。気づいた時には、見知らぬ街に着いていて、しかもトラックから飛び降りたとたん、デカいネコにシシャモを巻き上げられる。くやしくて「ほしけりゃくれてやる。いやだっていったって力ずくでもっていくきだろう」と啖呵をきったのが気にいられ、そのデカいねこがノラネコの先輩としてルドルフのめんどうを見てくれるようになる。名前を聞くと「イッパイアッテナ」と答えた。実はノラネコとしていろいろな名前を付けられていたことを言ったのだが、ルドルフはそれが名前だと思ってしまった。強いだけでなく字も読めるイッパイアッテナのおかげで、ルドルフも字を覚える。そして故郷の街が岐阜であることや、そこへの行き方も調べたが、いざ出発の直前の事件で、ルドルフは大きな決断をする! 物語の魅力は、テンポの良さ、友情、そしてルドルフの成長だろう。気持ちよく心に残るものが読みたい子におすすめ。

ポンちゃんはお金もち

 

ポンちゃんはお金もち (こぐまのどんどんぶんこ)

ポンちゃんはお金もち (こぐまのどんどんぶんこ)

 

 テストの成績が悪かったせいで、公園に移動遊園地が来ているというのに家で算数の問題集をやらなくちゃならなくなってしまったコータ。ところが、そのコータをこっそり誘いに来た子がいました。ぽっちゃりした男の子のポンちゃん。どこかで見たような姿で、お母さんのことも知っているといいます。思いきって遊びに行くと、その子は10円玉をたくさん持っていて、次々にいろんなものを買ってくれ、楽しくお祭りで遊びました。ポンちゃんの正体って・・・ありそうなのは、おじいちゃんあたりが子どもの姿で来たのか?などと考えながら読んでいたところ、意外な、でも納得できる正体が最後に明かされます。こんなことがあったら楽しいな、そして実際にあるかもという気持ちになれるすてきなおはなしでした。

ガーティのミッション世界一

 

ガーティのミッション世界一

ガーティのミッション世界一

 

 ガーディは元気いっぱいの5年生の女の子。ママとパパが離婚して、パパは海の石油プラントの仕事で留守がちなので、レイおばさんと住んでいる。ところが同じ街に住んでいたママの家が売りに出された。なんと、ママは再婚が決まって家が売れたら遠くに行ってしまうらしい。ガーディは自分が世界一ステキな5年生になって、ママにこんな素敵な娘を置いてよその街に行くなんてと後悔させるために、メチャクチャ張り切る。ところが美人で成績が良くて、父親が映画監督というメアリー・スーが転校してきたせいで何もかもがうまくいかなくなる。メアリー・スーは、パパの仕事まで海の環境破壊をすると言って攻撃を始め、ガーディはクラスから孤立してしまうところまで追い込まれるが、絶対にあきらめない! 劇の主役の座をメアリー・スーと争って手に入れたのに、あれ、なぜ? 予定どおりにうまくいかないことばかり。
最近、こういう元気いっぱい系の主人公が増えている気がする。お話で読んでいる分には楽しいけど、クラスにいたら友だちになりたくないと思う。幼児性が強くて、世界は自分が中心に回っていると思い込んでいるとしか言えなくて、友人を巻き込むけど、その友人への思いやりはなく、無条件にかわいがってくれているレイおばさんにちゃんと感謝の念も示さず、ベビーシッターであずけられているオードリーに言ってしまった残酷な言葉の謝罪だって結局ちゃんとしていない。何なんだろうかこれは? どんなことをしても、肯定されると勇気づけるためなのか? 別に、いい子である必要はないが、ここまでスペシャルな行動力がないと主人公になれないんだろうか? ガーディに振り回されているけれど懸命にがんばっている(でも大したことはできない)友人のジュニア辺りに主人公をして欲しい気がしてしまった。

絵のない絵本(アンデルセンの童話4)

 

絵のない絵本 (アンデルセンの童話 4)

絵のない絵本 (アンデルセンの童話 4)

 

 貧しい画家の若者のもとを月が訪れて三十三の短い話を語って聞かせる、アンデルセン流の「千一夜物語」。貧しい暮らしも華やかな成功も知っているアンデルセン自身の人生が、色濃く投影されている。観客にけなされて自ら命を絶ってしてしまう役者の話、本を批評される若い作家の話には、自身が役者や戯曲作家としては花開かなかったこと。ドイツ、フランス、イタリア、グリーンランド、中国、アフリカ・・・と様々な国が舞台に出てくるのも、旅の多かったアンデルセンならでは。幼い子ども、死者、花や鳥などを主人公にして、小さくて誰も気にしないような存在のささやかな思いを描いていくところは、月の見守る姿がアンデルセンにも思えてくる。
ふり仮名があって訳もやわらかいが、子どもが自分で読んで理解するのは難しい。人生経験を積んでから改めて味わいたい作品。アンデルセンと同じデンマークの画家イブ・スパング・オルセンの挿絵は、とても良い雰囲気で合っている。

シンドバッドのさいごの航海

 

シンドバッドのさいごの航海 (大型絵本)

シンドバッドのさいごの航海 (大型絵本)

 

 船乗りシンドバッドが荷かつぎシンドバッドに語る4回目から最後の7回目までの冒険をまとめた。船が巨大なウミヘビに飲みこまれるところを逃れたり、とある島では多くの人をこき使い殺してきた海の老人を倒したり。その勇気をたたえられ船に乗せてもらうも、奴隷の身となり象狩りに行かされる。わなにかかった赤ちゃん象をあわれに思い逃がしてやると、象が自ら象牙の山のありかを教えてくれ、それを親方に伝えると褒美に船と金をもらう。そしてシンドバッドはとうとう、旅先の国で出会った美しい踊り子ファティマを連れてバグダッドへ帰る。たくさんの子どもに恵まれ幸せな家庭を築いた船乗りシンドバッドは、愛はどんな富や宝よりもすばらしいものだと、荷かつぎシンドバッドに言うのだった。

シンドバッドと怪物の島

 

シンドバッドと怪物の島 (大型絵本)

シンドバッドと怪物の島 (大型絵本)

 

 シンドバッド3回目の冒険は、また一段とスリリング。何か月も海を旅していたある日、船は恐ろしい猿の島へ流れ着いてしまう。凶暴な猿たちに船は乗っ取られ、小舟に乗り換えて脱出。大きな城のある島を見つける。しかし、城に足を踏み入れるとそこらじゅうに人間の骨が転がっており、大きな怪物が現れた。たちまち捕らえられ竹の鳥かごに押し込まれる。怪物は肉付きのいい者から順にあぶり焼きにし、やがて満腹になって眠りこんでしまう。そのすきに鳥かごの竹の棒をはずし、目を覚ました怪物の目を突いて逃げ出し小舟に乗りこむ。怪物の仲間たちも襲ってくるなか助かったのはシンドバッドともう1人だけ。たどり着いた別の島でその1人も大蛇に食われてしまう。木の根の間に隠れてしのいだシンドバッドはいかだに乗り、もう2度と旅はしまいという思いで流れ着いた異国から帰るため船に乗るが、まだまだその後にも冒険があったのだった。