児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

かまきりっこ

 

かまきりっこ

かまきりっこ

 

 219匹のかまきりっこが生まれるけれども次々に捕食されて少なくなっていくものがたり。ウォーリーをさがせ風に隅から隅までいっぱい書いてあって、かまきりっこたちを探す楽しさがあるのだろうが、絵の情報に対して、文字の情報は圧倒的に少ないので、何を文字にするかは難しく、そのバランスが取れていない感じがする。名前があげられているかまきりっこと「あのこ」の「あのこ」「そのこ」「どのこ」という表現は、自分で探すのを促すのかと思うが、なんだかはぐらかされているよう。「のこったいっぴき じょうおうになって」というのも、一匹しか残らなかったを示したいなら「のこった たったいっぴきが」の方がいい気がした。またかまきり以外にもいろいろな生き物が登場するので、その説明的なものも欄外か巻末にでもあればいいのに、と思った。見どころは多いので、一人で根気よくこの絵本をながめて楽しむ子はいると思うのだが、ちょっと物足りない。

笑顔大好き地球の子

 

笑顔大好き 地球の子

笑顔大好き 地球の子

 

 世界中の子どもたちのさまざまな表情を集めたすてきな写真絵本。電車ごっこで、一人だけ反対向きに乗っていたり、木からさかさにぶらさがったりしている笑顔がとても楽しい。だが、よくこれで生きているとびっくりするほど痩せたソマリアの子どもの写真が挟まれ、ただの子どものかわいい写真集ではなく、世界中の子どもへの希望を託して撮影された写真集であると感じる。

みてよぴかぴかランドセル

 

みてよ ぴかぴかランドセル (ランドセルブックス)

みてよ ぴかぴかランドセル (ランドセルブックス)

 

 新しく赤いランドセルを買ってもらったかこちゃんは、うれしくてたまりません。誰かに見せたくて野原に行くときつねの子にあいます。自分も背負ってみたいというきつねの子の貸してあげると、次はうさぎのこ、ねずみのことやってきます。でもうさぎのこはなんとか背負えたけど、ねずみのこには大きすぎます。がっかりしたねずみの子は大声で泣き出してしまいました! 新しいランドセルで弾む思いや、自分も背負ってみたいあこがれ、そして素敵な解決までが素直に展開されている。西巻茅子さんの絵とあっていて、明るい気持ちで楽しめる。

よのなかを変える技術ー14歳からのソーシャルデザイン入門

 

 副題にあるソーシャルデザインとは、古い常識などによって苦しむ人々がいる社会の仕組みを変えていくこと。たとえばいじめ、貧困、ホームレス、障がい者の自立など切実な課題について仕方ないと我慢するのではなく、子どもの力でも世の中の仕組みは変えることができる!と訴える。多くの活動事例を紹介し、具体的な手順などの技術(ノウハウ)を惜しみなく提供し、プレスリリース(メディアへの売りこみ)の仕方にまで触れる。ホームページやSNSを利用して容易に情報発信や仲間づくりができる現代だが、重要なのは困っている当事者への思いやりや共感だとして、直接会うことの大切さも指摘している。小学生が大人を動かした事例も紹介されているが、多くは高校生による活動事例。社会に生きる自分を自覚できるのは、やはり高校生以上だろう。

学校に行きたくない君へ

 

学校に行きたくない君へ

学校に行きたくない君へ

 

 1998年創刊の不登校専門紙「不登校新聞」に掲載された著名人のインタビュー記事のうち20人を収録。インタビュアーは不登校やひきこもりの当事者・経験者である子どもたち。受け手の著名人にも不登校・ひきこもり経験者が多く、20人20様の人生観に正解なんてないんだとよくわかる。一方、共通する学校観、不登校観なども見えてくる。不登校になるのは、筋が通らないことに納得できなかったり、自尊心が強かったりするのかもしれない。それはむしろ、学校のおかしさに気が付いている正しい感覚。自分に向き合う時間を多く持つことは自分を必ず成長させ、人生をいいものにしてくれるという言葉が複数語られる。
個人的にテンポよく言葉が入ってきたのは、樹木希林さんと田口トモロヲさんのインタビューで、共感とか理路整然とかいうことではないが、その人だけの感性から出てくる言葉がおもしろかった。

100%ガールズ 3rd season

 

100%ガールズ 3rd season (YA! ENTERTAINMENT)

100%ガールズ 3rd season (YA! ENTERTAINMENT)

 

 中学3年になった真純。元なでしこリーグにいたコーチは厳しいが、サッカーが上手くなっていく実感がうれしい。同級生や後輩からの信頼もあつく、次期部長は真純だと誰もが思っているが、密かに宝塚受験を目指して声楽に加えダンスレッスンも始めた真純の心は揺れ動いていた。体育祭、合唱コンクール、文化祭などもう3回目となる学校行事にもそれぞれ予想しない展開があるなか、真純の心はしだいに1つの方向へ固まっていく。親よりも友人や先輩の存在や影響が大きくなっていく年代。3巻目でようやくほんのり恋心が描かれる幼なじみ男子が、いい働きをしています。

100%ガールズ 2nd season

 

100%ガールズ 2nd season (YA! ENTERTAINMENT)

100%ガールズ 2nd season (YA! ENTERTAINMENT)

 

 2巻目は、サッカー部が準クラブから正規の部活に昇格できるかどうかという前半、2年生になった真純が後輩の教育に悩む後半と、部活動を中心に描かれる。サッカー経験のない先生が顧問の弱小クラブに、なでしこリーグの元選手がコーチに来てくれるかもしれないというラストだが、真純は宝塚受験のため声楽レッスンを受け始めていて、今後は夢と部活のどちらを選ぶのかが悩みどころになるのではという予感をさせる。