上司のブックトークにつられて読んでみました。
オーストラリアの田舎町を舞台に、小馬の所有権をめぐるある裁判の顛末が語られる。
極貧の農場の息子スコティーが大切にしていた小馬がいなくなる。
ちょうどその頃、川向こうでは、地域一番の富豪の娘ジョジーが野馬を調教していた。彼女は小児麻痺で半身不随。そんな彼女のために特別に作らせた特別な馬車を曳くための馬だった。
いなくなった小馬を探し歩いていたスコティーは、彼女の馬こそ、行方不明となった自分の馬だと確信するが、はねつけられる。
彼女の馬が何者かに盗み出されると、警察は直ちにスコティーの犯行と断定。事件は法廷に持ち込まれる。
語り手である「ぼく」の父は、弁護士としてスコティーの弁護を引き受ける。
父は、スコティーの馬が行方不明になったとき、警察は何らの処置をとらなかったのに、ジョジーの馬が行方不明になると、直ちにスコティーの犯行と断定するなど、不公平であると断じ、問題は、スコティーが馬を盗んだか、ではなく、馬はどちらのものか、であるとして、スコティーへの告発を取り下げさせた。町は、スコティーに味方する者、ジョジーに味方する者に二分されるが法廷では、馬がどちらのものであるかを科学的に立証することはできず、ある賭けに委ねられることとなる。
手に汗握る法廷劇、であり、正義とはなにか、真実とはなにか、という事への実に鋭い問いかけである。
読み手としては「ぼく」の目からどうしてもスコティー側に肩入れしたくもなるものの、ジョジーの事情もよく分かる。正義は一通りではないし、ましてや、悪役と敵役で割り切れるほど単純でもない。それだけに結末が、後味悪くならない手並みは見事としか言いようがない。
ただ、最後の一段落の暗示するものを除いては。