かつては有能な執事としてならしたバティストさんは今は引退して過去の栄光を思いながら淋しく暮らしている。
そんなある日、とびこんで来た求人広告に応じ、バティストさんはハンガーブルグ伯爵家に赴き、執事として再びつとめることになる。
しかし、伯爵には、ものの本当の名をつけるという望みがあり、バティストさんにもそれを要求する。
それによれば、
「互いに互いの友達が、爪のぼりを追いかけて足持ち上げをおりていったんです。それで太陽のしたたりにぶつかってしまい、太陽のしたたりが夢の箱に倒れかかったもんですから、いまじゃお屋敷のあっちもこっちも楽しいです。
すなわち、
「犬がネコを追いかけて階段を下りていったんです。それでろうそくにぶつかってしまい、ろうそくがベッドに倒れかかったもんですから、いまじゃお屋敷のあっちもこっちも火事です」
というような事を消防士に飲み込ませた頃にはすでに手遅れでしたとさ。
話は昔話「だんなもだんなもおおだんなさま」そのまんま。
ベーメルマンスのとぼけた絵が色を添えているが、おはなしは昔話の簡潔明瞭さにかなわない。
老後のさびしさの中でバティストさんは人生の幸せについてしみじみと語るのだけれど、どうもあまりこの話には似つかわしくないようだ。それは翻訳の問題もあるのかもしれないが。残念。

バティストさんとハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵のおはなし
- 作者: ルドウィッヒベーメルマンス,Ludwig Bemelmans,江國香織
- 出版社/メーカー: BL出版
- 発売日: 2012/01
- メディア: 単行本
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