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青の読み手

 

 舞台は中世の雰囲気の王国。ノアは孤児で、猫の親方と言われるあこぎな男の下で、貧民窟でネズミと呼ばれる雑用請負の仕事をさせられている。彼の面倒をみてくれていたやさいいロゼが行方不明になって以来、彼女を見つけ出したいと願っている。そんなノアに修道院から本を盗む仕事が依頼された。依頼主の男爵は不気味だし、ヤバイ仕事に決まっているが親方にはさからえない。しかもロゼの行方を代償に教えてくれるという。修道院に忍び込み、罠に陥るもなんとか無事に本を持ち出した。本を渡せば殺されるから駆け引きを、と思う間もなく男爵につかまったノア。そしてロゼそっくりなのに自分は王女だと言い張る強気の女の子を男爵の屋敷で会う。牢に閉じ込められたノアが出会ったのはなんと人間の言葉を話すネズミのパルメザン。男爵の実験で多くの仲間が犠牲になったが、彼は生き延びて逃げ出したのだ。二人は助け合うことにする。盗まれたサロモンの書は最大級の黒魔術の書だが、「青の読み手」と呼ばれる特別な人間にしかその本の字が見えない。ノアにはなぜかその文字が見え、本は男爵の前から消える。いったい何が? 王国の権力争いと、魔力をめぐる争い、それに対抗するノアとパルメザン。メリハリがはっきりした読みやすいファンタジーで楽しく読めるが、その分、想定を超えたドキドキは見込めないかな? 良心的な作品だと思う。