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ヴァイオレットがぼくに残してくれたもの

 

ヴァイオレットがぼくに残してくれたもの (SUPER!YA)

ヴァイオレットがぼくに残してくれたもの (SUPER!YA)

父親の突然の失踪に、取り残された家族は、どう再生するべきか。主人公ルーカスは、タクシー会社に忘れられ放置された骨壷を持ち帰り、父親不在の空虚さを埋め合わせようとする。 しかし、仕組まれたシナリオのように、骨壷の人物がヴァイオレットというピアニストであることがわかると、彼女がルーカスの父親と何らかのつながりがあったことがわかり始めて行く。父は死んだのか?また、生きているのか…ルーカスにヴァイオレットの幻影が真実へと導いて行く。
 
これは、高校生でも多分読み取れない部分が多いのではないか?
初期のポール・オースターのような語り口で、好きな人は好きな世界観だが、父親がルーカス達から自由になりたがっていることを、ルーカスが理解するラストには、共感できるか否かは別れるだろう。死者を介在させないことには、家族と向き合えなかったルーカスのどうにもならない孤独が切ない。