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象使いティンの戦争

 

象使いティンの戦争 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)

象使いティンの戦争 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)

 

 ティンの夢は象使いになること。象のレディの世話をまかされ、徐々に自信をつけつつある。ベトナムの中央高地で家族で過ごしている。ベトナム戦争の中で、父はアメリカの偵察を手伝っている。アメリカ人はとても親切だ。だが、アメリカ人たちは撤退し、村に北ベトナムのベトコンがやってくる。懸命に逃げようとするが、多くの村人がとらえられる。ベトコンにすり寄る男の子や、ほほえみかける少女も出る。みんな生きるために必死だ。だが、自分たちを埋める穴を掘らされ、建物に火をつけられたとき、ティンは友人のトマス、ユエンと3人で隙を見て逃亡する。背後では、全員が殺された。逃亡のジャングルの中、仲間割れが起こるが、なんとか逃げられた村人と合流。家族も無事だった。だが、グループは都会のリーダーに率いられ、象は食糧としてしか見られていない。ティンは、自分の象のレディを逃がし、隣国タイへの脱出を決意する。 著者がアメリカ人のせいか、親アメリカ視点で描かれているが、実際こういう少年はいたと思う。だが、アメリカもまた殺戮を行っていたことを書かないのはフェアでないのでは? どちらにし、すべてが殺される戦争のむごさを感じる。