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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

月神の総べる森で

 

月神の統べる森で

月神の統べる森で

 

 海から来たヒメカの民は、土地を囲い、それまでカムイを奉じて自然とともに生きてきた土着の民と敵対した。鳥や獣を根こそぎとりつくし、野の実りも残さぬやり口に抗議に訪ずれた首長たちをも捕える。若き首長アテルイと、その幼馴染で月の巫者シケイケルは、脱出後、それまで家族以外を知らずに育った少年ポイシュマと出会う。ポイシュマを家族に返すため、アテルイはつきそい、そこでポイシュマが、ヒメカに滅ぼされた里の生き残りで、ふくろうのカムイにより育てられていたことを彼自身も初めて知る。だが、その間、シケイケルは囚われ、追う途中でヒメカの少年ワカヒコと出会う。ポイシュマとワカヒコは、心を通わせあうが、シケイケルの死をきっかけに、ポイシュマの心に怒りと憎しみが生じる。だが、最後には、シケイケルのためにも理解しようと思う、というところまでの物語。ヒメカが悪者に書かれすぎじゃないか? と思わず首をかしげた。新大陸の白人のインディアン侵略風だが、ヒメカが、ただただ貪欲な悪者という図式的な展開が上橋さんと違うところか。