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希望の海へ

 

希望の海へ

希望の海へ

 

 戦後、戦災孤児や、生活が困窮して一時的に預けられた子どもを、国策としてイギリスからオーストラリアに送り出したという歴史を踏まえた物語。アーサーはおぼろげな姉キティーの記憶と、姉からもらった幸運の鍵を握りしめて船に乗る。親切なマーティがかばってくれたおかげで、チビなのに、なんとかいじめられずに済むが、送り込まれた農場で、サディスティックに子どもたちを奴隷のようにこきつかうベーコンに苦しめられる。仲間の1人が死んだあとマーティとともに、ベーコンの妻で、やはり虐待されていたアイダの力を借り脱出。アボリジニに保護され、野生動物の孤児の保護をしているメグズおばさんに救われる。成長した二人は、自立のために造船所で仕事をおぼえ、順調にくらしていた。だが、不況で、工場は倒産。仕事がない中でマーティは酒におぼれて事故死した。アーサーも絶望し、マグロ船に乗り、さらに海軍に志願し、ベトナム戦争の悲惨な体験で心を病んで病院に入院。だが、看護婦のジータとの出会いで立ち直る。二人は結婚し、再度造船の仕事につき、娘アリーが生まれた。自分の船でイギリスにわたり、姉のキティを探すことが、アーサーの夢となるが、実現の直前。病でこの世を去る。父の夢を受け継いだアリーは、単独イギリス行に挑戦。ネットで陸と交信しながら、約4ケ月をかけてついに到達する。嵐に見舞われ、アホウドリに励まされ、だが、そのアホウドリを自分の釣糸の事故で死なせてしまい、激しく後悔するアリー。空で偶然見つけた人工衛星国際宇宙ステーションの乗組員と、まさかの交信が実現しての興奮。そして、たどりついたイギリスでキティと出会えた。キティはカナダへと送られており、鍵は、二人が大好きだったオルゴールの鍵で、オルゴールからは、お父さんが大好きだったロンドン橋落ちたの曲が流れる。知られざる歴史や航海を追体験できる。前半も後半も劇的で読ませるが、ここまで劇的でいいのか・・・とも思う。