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わたしは大統領の奴隷だった

 

ジョージ・ワシントンの家で彼の妻マーサのお気に入り奴隷だったオーナ。生まれた時から奴隷として暮らし、逃亡を図って過酷なめにあった奴隷仲間も見てきた。冷静で優秀なオーナは、大統領官邸でも働き、マーサの感情の波をなだめて補佐していた。奴隷は財産だった時代、奴隷の開放や規制に向けての方が整備される州ができていても、この家の奴隷には人道的な扱いをしているのだから、自由にしてはむしろ奴隷の方が困るという論理の元、大勢の奴隷を働かせていていた。オーナは、確かに良い扱いを受けていたかもしれないが、奴隷でいる限り、自分で自分のことは決められない。オーナは、問題の多い姪のイサベラがうまく結婚生活を続けられるように、オーナをプレゼントとして贈ろうとマーサが考えているのを知り、逃亡する。仲間の助けを借りて新しい人生を歩みだすが、マーサには、その裏切りが許せなかった。フランス人に誘惑されたなどの噂を流し、懸賞金をつけてさがす。一度は見つかって連れ戻されそうになるが再度逃げ、結婚し、子どもも持った。最終的には夫にも子どもにも先立たれるが、自分で自分のことを決める自由を手に入れた人生に満足して生涯をおくる。読んでいて、奴隷制を正当化させる論理は、他の所でも使われていると感じた。例えば女性差別でも・・・。読んでいると、他の人間を踏みつけにする論理が堂々と今もあることに気づかされ、昔の物語ではないと感じさせられる。