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北風のうしろの国下

 

北風のうしろの国(下) (岩波少年文庫)

北風のうしろの国(下) (岩波少年文庫)

 

 北風のうしろの国に行って、ダイヤモンドは成長した。そのあまりの純粋さはバカではないかと思われることさえあったが、父さんの雇い主の破産と、さらに父さんの重病という試練の中でも、ダイヤモンドはおちついて自分と同じ名前の馬ダイヤモンドを御して、辻馬車の仕事をしてのける。新しい知り合いレイモンドさんの助けを借りて、重病で倒れたナニーを病院に連れていく。レイモンドさんは、ナニーと自分の馬を預ける契約を父さんと結ぶ。残念ながら、それは経済的には割があわなかったが、誠実に応えてみせた父さんを、レイモンドさんは。自分の御者として雇い入れてくれた。ダイヤモンドはレイモンドさんの家で住み込みで働くことになるが、ある日、気付くと自分の部屋で倒れていた。みんなはその死を悲しむが、ダイヤモンドから北風のうしろの国の物語を聞いていた「わたし」は、彼が北風のうしろの国へと旅ったことを知る。純粋な主人公が、その純水さゆえ早逝するビクトリア朝の物語ではあるが、しんとした余韻の残る最後になっている。作中作の「ヒノヒカリ姫」もなかなか面白く、今どきこれだけの本を読める子は多くないかもしれないが、読まれれ欲しい物語である。