児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ジャングル・ブック

 

トラに追われているところをオオカミに助けられた人間の子。モウグリ(カエルの子)と呼ばれ、ヒグマのバルーや黒ヒョウのバギーラのうしろ盾でオオカミ一族に迎えられ、ジャングルの掟を身につけていく。オオカミの兄弟やほかの動物たちと冒険、闘いを数々ともにし青年へ成長する一方、モウグリは母親への思慕も断ち切れない。そして最後は人間のところへ帰ってゆくのだ。
全編を通して月の描写が印象的。ジャングルの夜を照らし影をつくる月の光。満月の夜に開かれるオオカミ一族の集会。そして動物たちは月の満ち欠けで時の流れを考える。昼よりも夜、人間よりも動物たちが生き生きとする世界。ゆえに、人間には人間の道と悟っているジャングルの仲間たちのいさぎよさが胸をつく。
原書のうちモウグリが登場する8編を収める。「福音館古典童話」シリーズの木島始訳は訳語がやわらかく、また時系列に配慮して最初の1編を2つに分け理解しやすくしているので、高学年にも。 (は)