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アイヌの昔話 キノコが生えた男の子 (イソイタク4)

アイヌの昔話 キノコが生えた男の子 (イソイタク4)
     文:寮美千子 絵:鈴木隆

     発行所:公益財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構

     発行日:2017年3月1日

バラエティに富んだ6話。
ちょっと不気味な想像をしてしまう表題作は、カムイの子を産んだ女性の美しさをねたんだ沼地の魔女が、赤ん坊を森に隠してしまう。まだ1人で動けない赤ん坊は、いつのまにか大きな倒木と一体になり苔やキノコにおおわれてしまうが、山津波(岩石や倒木によってせき止められた川が決壊して起こる)に流されたどり着いた浜で実の父親に助けられる。父親はマサカリで苔やキノコをはがし、葦の束をいくつも組んでその下をくぐらせる魔物払いの儀式を行い、赤ん坊は無事に人間に戻ることができる。
ほかに、勇者を殺そうとたくらんでいる村の男たちの酒盛りに、勇者自身が女性の格好でまぎれこみ酒を注ぎつつ男たちを逆に切り殺してしまう「女に化けた勇者ポイヤンベ」、何かといちゃもんをつけては宝物を巻き上げるのを楽しみとしている性悪男が、カムイからも村の人々からもこらしめられる「狐にされた性悪男」。「星になったサマイェクル」と「群れ星になった乙女たち」は、それぞれ北斗七星とすばる星の由来。「季節はずれの蝉の声」は、津波と山津波で流された村でたった1人生き残ったおばあさんが悲しみに泣き叫んでいるのをカムイたちが見かねて、おばあさんを蝉にして夏の間は人間界で鳴いてもらい残りの期間はカムイの国で静かに過ごしてもらうことにしたという話。