児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

未来編 SFショートストーリー傑作セレクション

 

 SFの重鎮たちの未来SF。「ゆきとどいた生活」星新一は、オートメーション化の進んだ未来社会の皮肉。「人口九千九百億」筒井康隆は、人口が過密の極地に達した未来社会だけど、この世界で食料はどうやって調達しているのかしら。人間だけであふれて、食料生産の場所もなさそう! 「通りすぎた奴」眉村卓も超過密な地球をエレベーターで行き来する人の中で、コツコツと階段で最上階二万五千百三十階に到達した男を待ち受けているもの。「カマガサキ二○一三年」小松左京は、オートメーション化で切り捨てられたこじきに転落した二人が、未来の2060年から来たこじきの助けで「こじき機械」を手にするが、大企業に大金を見せられて手放し、手に入れた金もすぐに使い果たしてまた元の生活に戻ることになる落語のような語りが見事だが、2013年はもう来たなぁ(1963年発表!)。実際に来た2013年は派遣や非正規でさらに先が見えない時代となったかもです。そして「緑の時代」河野典正は謎の苔に覆われていく新宿の不思議な味わいのある作品。全てが50年以上前に書かれたというのがちょっと驚き。今読んでもやはり古くないところがすごいです。