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ジュリアが糸をつむいだ日

 

ジュリアが糸をつむいだ日 (児童書)

ジュリアが糸をつむいだ日 (児童書)

 

 ジュリアは韓国系アメリカ人。だけどキムチは苦手。友だちを家に連れてくると、キムチのにおいで引かれてしまうのでますますキムチが嫌いになった。だけどパトリックは違う。初めてきた時「すっごくいいにおい!」って言って、キムチを大好きになってくれた。二人は7年生の親友で、一緒に楽農クラブ畜産部門の研究に取り組むことになる。でも動物なんて飼えない。そんな二人に、ジュリアの母さんは子どものころカイコを飼った話をしてくれた。たちまちパトリックは夢中になるが、ジュリアはそんな韓国っぽいテーマはイヤだ。成り行きで話が進み、見つからないといいと思っていた桑の木まで見つかってしまった。ところが、その街で1本の桑の木の持ち主ディクソンさんが黒人のお年寄りだとわかると母さんはいい顔をしない。どうやら朝鮮戦争の時に、黒人のアメリカ人がらみでイヤな思い出があるみたいなのだ。やっかいな弟ケニーへのイライラ。乗り気ではなかったのに、孵化して育つカイコの姿に徐々に夢中になっていくジュリア。ところが、せっかくカイコが大好きになったのに、絹糸をとるには、羽化する前に繭を煮てカイコを殺さなければいけないとしってショックを受ける。韓国系の住人がいない街で、中国人や日本人と間違えられる不満や、同時に自分はアメリカ人だという思い。ひょっとすると母さんが黒人差別をしているかもしれないという疑いの中で、どうしたらいいのか迷う。最後まで研究を完成させ、最少限の絹糸を取りながら、他の繭を羽化させる中で感じる命の重み。著者は、韓国系アメリカ人。きっとジュリアのようにまっすぐな少女時代を過ごして感性豊かに育ったのでしょう。