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お年寄りにもおはなしを!高齢者のためのおはなし会読本

 

お年寄りにもおはなしを!  高齢者のためのおはなし会読本

お年寄りにもおはなしを! 高齢者のためのおはなし会読本

  • 作者:山根 玲子
  • 出版社/メーカー: 文芸社
  • 発売日: 2019/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

東京子ども図書館で講師も務める著者は、長年にわたって高齢者向けおはなし会をおこなってきた。その経験について同図書館のお話のリーダー研修の際に提出したレポートと実践報告に加筆したもので、内容も分量もとてもわかりやすく読みやすい。失敗談も含めて具体例が豊富。20年の積み重ねに裏付けされた心構えやプログラム構成に説得力がある。
子ども向けに行う場合と異なる部分を知るのはもちろん、同じ部分もあるのがおもしろい。例えば、ちがうことと言えば認知症についての知識と理解は必須。認知症の程度によってグループ分けした方がよい。手遊びは「もうやめどきと思ってから、あと5回10回」繰り返す。そうすると手の不自由な方もしだいに参加して満足と意欲を感じてもらえる。子どもへ行う場合は子どもと本を結ぶという目的があるが、お年寄りにはその時その場を楽しんでもらうことが第一、といったこと。一方子ども向けと同じことは、聞き手の反応に引きずられない、あくまでリーダーはこちら側。聞き手へ問いかけたらおしゃべりに収集がつかなくなるという失敗、お年寄りにもあるそうです。それから施設の職員に積極的に参加してもらうこと。小学校でも担任の先生が一緒に楽しんでいるクラスをは子どももよく聞いて反応もいいです。そして何よりも、自己満足ではなく聞き手のためのおはなし会であること、などです。巻末付録「プログラム作成の参考のために」がとても充実しています。特にわらべうた・手遊びが、楽譜、動作のイラスト付きで子ども向けにも大いに参考になります。  (P)