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桜の木の見える場所

 

桜の木の見える場所 (児童単行本)

桜の木の見える場所 (児童単行本)

 

10歳のマファルダは目の中に霧がある。一万人に一人がかかるスターガルト病というのだそうだ。そしてこの霧がだんだんひどくなり、暗闇になってしまうのが怖い。学校には大好きな桜の木がある。その桜の木が見える距離がだんだん近くなっていくのが怖い。桜の木に登るのが大好き、そこで子ネコも見つけたし、ルーマニア出身だという用務員のおばさんエステッラとも出会った。目が見えなくなる不安を打ち明けると「大切なものリストを作るといい」と、アドバイスしてくれたエステッラ。こっそり聞いてしまった両親の「あと半年で見えなくなる」という会話。いつの間にか溝ができてしまった友だちと、思いがけず仲良くなったフィリッポとの関係。大好きな本の主人公みたいに一生木の上で暮らすために、目が見えなくなる前に、桜の木の上にすみかをつくることを計画するのだが、助けてくれるとあてにしていたエステッラが急にいなくなった! 不安を抱えながらも、自分にとって本当に大切なものは何かを懸命に考え続けるマファルダの姿が印象的。著者は、実際にこの病気になり、現在は進行が止まっているが、失明の恐怖と実際に闘っているというだけに、描写はリアル。もし、自分がマファルダだったら、とつい考えてしまった。