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なつかしい本の記憶ー岩波少年文庫の50年

 

 1950年創刊の岩波少年文庫は、今年70周年を迎える。50周年記念刊行の本書は、①著名文化人きょうだいの対談(中川李枝子・山脇百合子池内紀池内了岸田衿子岸田今日子)、➁斎藤惇夫氏の講演「岩波少年文庫とわたし」、③エッセイ(瀬田貞二石井桃子など)の3部で構成。
対談は、きょうだいならではの遠慮ない物言い、同じ本に接しても異なる記憶がおもしろい。そして、子どもと本についての様々な示唆にあふれる。読書へ導く身近な大人の存在の大事さ、活字に飢えていた時代のエネルギー、「耳」で読む力の育った時代(ラジオ、紙芝居、幻燈など)、大人のことも支える児童文学の力など。

斎藤惇夫氏は、石井桃子さんが関わった創刊からの4年間が自身の思春期と重なったことを、「『岩波少年文庫』との出会いの絶頂期」と表現する。

エッセイの部では、大人になってから児童文学に出会った幸運をつづる目黒考二氏(「本の雑誌」発行人・当時)や、ケストナーのこと(猪熊葉子さん)、メアリー・ポピンズのこと(林容吉さん)、ドリトル先生翻訳話(井伏鱒二氏談)など。瀬田貞二さんが市民講座で語った「子どもと文学―ファンタジーの特質」(『児童文学論(上)』福音館書店、所収)は、多くの作家や作品を例示してわかりやすく、いつも立ち返りたい拠り所です。  (P)