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フラミンゴボーイ(2020課題図書 高校生の部)

 

フラミンゴボーイ

フラミンゴボーイ

 

 ヴィンセントは、子どものころから部屋にかかっている絵が大好きだった。自分と同じ名前の画家が描いたヨットの絵、卒業試験を何とか終わらせた18歳の時、その絵が描かれたフランスの海辺に旅に出る。だが暑さや蚊に悩まされ、誰もいない海辺の道で倒れてしまった。その彼を助けてくれたのは、その地のフラミンゴと心を通わせることができるロレンゾという不思議な男性とケジアという穏やかな女性だった。50歳位かと見える二人は、ヴィンセントを看病してくれ、彼は、かつてロマとしてメリーゴーランドの興行をしながら放浪していたロマとしての暮らしを営んでいたケジアとケジアの両親が、普通の人間にはなじめないけれども、動物と心を通わせる才能を持ったロレンゾとその両親が、ドイツ占領下のフランスで助け合った子ども時代の物語、そして彼らをなんとか守ろうとしてくれたドイツ人伍長との交流の物語を聞かせてもらう。モーパーゴらしく巧みな語りだが、これもモーパーゴらしくなんとなくおとぎばなしめいて展開している。他の人に理解されないロレンゾの描写のリアルな雰囲気が魅力ではあるが、フランス民兵団というナチに協力した組織の戦後のことなど正直気になる。もう少し、書きこんで欲しい思いが残る。