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バーバラへの手紙

 

 大切なおさない娘に、美術の仕事をしていた父親が心をこめてたくさんのイラストを入れた手紙を送った。パパがいたのは戦場なのに、内容は楽しく、イラストは暖かい雰囲気で、パパがいる場をを忘れてしまいそうになる。反ナチの活動をして逮捕された著者のレオは、釈放後オランダに亡命。そこで妻となるユダヤ人のエリザベートと出会い、娘バーバラが生まれる。ナチスのオランダ進攻により、二人は強制的に離婚させられ、レオは逮捕、3カ月後には軍に入れられてウクライナに送られるという背景がこの物語の背後にある。鉄砲を空に向かって撃つことしかしないこの兵士は1944年に戦死する。ひょっとすると銃殺されたのかもしれないとのこと。愛情と才能豊かな一人の若い父親が、生きた証のような本。激しく告発するような作品ではないが、きちんと向かい合いたい。