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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

タスキメシ 箱根

 

前作では高校生だった早馬は25歳。病院の管理栄養士を辞め紫峰大学の院で運動栄養学を学ぶために入学した。同時に、同大学の駅伝部のコーチアシスタント兼栄養指導をたのまれて引き受けることにした。監督の館野は、穏やかな性格だが、箱根駅伝初参加を目標にしていた。国立の同大学は、粒ぞろいの選手はいない。だが新4年生には欲はないが実力十分の森本、彼と共に頑張るキャプテンの千早など有望な選手がそろっていた。弟春馬オリンピック出場をめざし頑張っている。だが、千早は早馬の存在が気に入らない。自分ができなかった夢を託されたくない、とつっかかった千早に対し、早馬は逆に、プロにあこがれながらもなれず夢をひきずる自分の未来を自分に投影しているのではないか? と指摘する。「努力は、裏切る」という早馬。そこには大学時代に何度も駅伝選手に手が届きそうになりながらもケガで挫折してしまった辛い体験があった。そして千早はあろうことか箱根駅伝の予選会でアキレス腱炎で棄権することになってしまった。努力だけではどうにもならないジレンマと、それでも努力する思い。自分が何のために走っているかという一事は、とりわけ駅伝というチーム競技の中で燃え上がる気がする。出版は2019.11で、ラストは2020東京オリンピックでもうすぐマラソンが始まる場面。さすがに、コロナでこのオリンピック開催中止までは予期できなかったのでしょうが、作品のできには影響を与えていません。