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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

光吉夏弥  戦後絵本の源流

 

岩波で編集をしていた。楽しい絵本の翻訳をした。そんなイメージしかなかった光吉夏弥が、若き日には舞踏評論(しかも難解な文章で!)をしていて、その後写真雑誌に関わり、戦後になり本格的に子どもの本に関わるような経歴を持っていたことをこの本で初めて知った。佐賀藩の人脈もあり、活躍はしたが若くして亡くなった父。慶応ボーイで、国際観光局に入局など、知的でオシャレな一人の青年のイメージが立ち上がってくる。早くから集めた絵本や児童書を活用した戦後の活躍のようすにも、当時は50歳前後なのだが、柔軟で若々しさを感じてしまう。戦争に巻き込まれなかったら、どういう形で才能を伸ばしたのだろう? 自分を語らなかったという光吉さん、読後は、もっとこの人について知りたいという思いがむしろ募った。