児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

同志少女よ敵を撃て

 

本屋大賞も受賞し、読まれているのをうれしく感じる本。児童書として出たわけではないけれど、あきらかな成長物語で中高生に薦めたい。

農村で生れ、害獣駆除のために銃を習ったセラフィマ。だが、戦争がはじまりドイツはソ連に侵攻してきた。幼馴染で気が優しいミハイルは、その優秀さゆえに進学したが徴兵されたという。そして辺鄙なこの村までドイツ兵がやってきた。セラフィマと母が猟から戻った時、村人はドイツ軍に処刑されており、とっさに発砲しようした母も、逆にドイツ兵に撃たれて殺さる。逃げようとしたセラフィマもドイツ兵に囲まれてレイプ直前となったが、ソ連軍に救われた。兵を率いた女性兵士イリーナに、復讐を望むかと誘われ、女性だけの狙撃兵への道を歩み始める。家族を失った少女たちが集められた学校での厳しい訓練。ついに始まる実戦、転戦しながら直面する戦場の過酷さ。そしてスターリングラードの包囲戦、要塞都市ケーニヒスベクと戦いは続く。少女の復讐劇と戦場で生まれる友情路線、と予想した物語は、途中からまさかと思う展開に!  スナイパー同士の駆け引き、そして「敵」とは? 

(この後は、少しネタバレ要素あり!)

ちなみに、私はこの作品でレイプが戦場でおこる理由を理解して愕然とした。ストレスの反動、とイメージしていたが、それだけではなく輪姦することで男たちが仲間意識を高めるという構造。男性だけのゆがんだ社会の悪は、戦場以外の場所でも存在する。まさしく、同志少女よ敵を撃て!です。