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笑いを売った少年

 

両親を亡くしたティムは、ある日、父さんとよく行った競馬場で、立派な紳士から取り引きをもちかけられる。

生母から受け継いだ陽気な笑いと引き替えに、どんな賭けにも勝てる能力を得るという契約。もし、賭けに負けることがあれば笑いは返還されるが、契約について口外すれば両方とも失う。

契約書に署名したティムは、その時からほほえむことさえ出来なくなった。家を出たティムは、ティムの笑いを使用する男爵の元、実業家としての素養を仕込まれながら世界中を旅するなかで、自分にとって何より大切なものだった笑いをとり戻すべく、その方法と機会を探りつづける。

隙をみせない男爵(実は悪魔・・・)は、金の力でティムの周囲にスパイを張りめぐらせ、ティムを苦しめる。

結局、ティムが笑いをとり戻した方法は、たった1ペニヒの簡単な賭け。しかしそれには、ティムと男爵の契約を見抜く者にめぐりあう難しさがあったのだ。

スリリングで引きこまれる物語。ぎしっと詰まった文字にひるまず読んでほしい。 (は)