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アンナの戦争

 

ドイツで裕福な暮らしをしていたアンナ一の家は、ユダヤ人として迫害され国外に逃れようと決心するが、ビサが下りず立ち往生。イギリスが『キンダートランスポート』として子どもの受け入れのみを表明してくれた機会に、両親はアンナを送り出した。途中、突然バスケットの中の赤ん坊を託される。呆然としながらも、赤ん坊を守り、無事にイギリスに到着。幸いイギリスの里親は良い人ではあったが、都会っ子のアンナにとって、電気も水道もなく、屋外トイレを使う農家の暮らしはショックの連続。そしてドイツからきたというのでナチ呼ばわりするいじわるな級友もいた。そして戦争は拡大していく。イギリスへの爆撃が始まる中、里親の家の子モリーとフランクは、病気の母親に合いたくて脱走したが、足をくじいた脱走兵を助けた。だが、アンナは彼が、誰も居ないと思っているときに、ドイツ語で悪態をついたのを聞き、スパイだと気が付く。しかしモリーとフランクは彼をつかまえることにためらう。まもなくチャーチル首相が、ここの極秘で視察にくる情報を両親から聞きかじって、彼に聞こえる場所でしゃべってしまった。戦時下で、それが知られれば、両親が重要秘密を漏らした容疑で逮捕されるかもしれないからだ。スパイを足止めし、かつ情報を外に漏らさず、里親も守るために、アンナは必死に方法を考える。戦争の中、両親から引き離され、暮らしも激変する中で。懸命に自分がやれることをしようとするアンナの姿は魅力的。しかも、次々に起こる事件にハラハラしながら、一気に読んでしまう。