ヒットラー占領下のデンマークの一家の物語。主人公の父の実話を基にした作品。弱小国のため、ドイツに占領されて、「ヒットラーのために歌を歌うカナリヤ」と揶揄されたデンマーク。主人公のバムスの母は女優、父は舞台美術も行う画家だ。親友アントンはユダヤ人だが、父の兄はナチスを支持している。兄のオーランドはレジスタンスに加わり、アントンとバムスも手伝うが、姉はドイツ兵と恋に落ちる。デンマークは、ユダヤ人を国民として最も早く認めた国で、占領下でも犠牲は2%にとどまったという。恐怖を感じながらもレジスタンスを手伝うバムス。家族の安全を最優先にしているが、ついに立ち上がる父。ユダヤ人をすくうために、最大の演技を行う女優の母、と、各人が平凡だが、生き生きした人間として描かれている。老兵と若年兵がデンマークにまわされ、ドイツ兵も見て見ぬふりをしてくれた様子など、単にドイツを悪として描かない点もバランスがとれていてよい。