児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

竜が呼んだ娘

 

竜が呼んだ娘

竜が呼んだ娘

 

ミアはひ弱に生まれ、生き延びられないと見限られたか母親にも捨てられた。だが、二のおばは、根気よくミアを大切に育ててくれ、無事に成長した。ミアたちの村は、遠い昔政変に敗れた者たちが閉じ込められている谷間の村で、外にでることはかなわない。だが、竜に選ばれたものだけは出ていくことができ、それは名誉なことだ。両親もなく、人より遅れて育ったミアは自分が選ばれるとは夢にも思っていなかったが、竜はミアを選び、ミアの一族だけが使える薬草をもって外の世界に向かう。連れていかれた先はなんと王宮。そこには奥との間を仕切る有能だが横柄な女官リリスがいて、ミアにつらく当たるが、二の叔母が仕込んでくれたきちんとしたマナーに助けられる。ミアの役目は、行方不明になった竜騎兵ウスズとその竜、ウスズの恋人だった魔女星の宮を探すことだった。偶然に助けられ、ウスズたちを見出していく中で、リリスこそ自分を捨てた母であったことを知る。みそっかすだったミアが立派に役目を果たし大円団で終わるが、世界の構築が甘い感じが否めない。竜に選ばれる? と思うと、どうも竜は人間に仕えているようだし、敵対勢力の正体もいまいちあいまい。貧苦の中の金鉱の子どもたちともそれっきり? など正直不満。実力がある方なので、もうちょっと頑張ってほしかった。 

幸い、続編が出たのでそちらに期待します。

ぼくの図書館カード

 

ぼくの図書館カード

ぼくの図書館カード

 

 黒人として生まれたために図書館の利用を認めてもらえなかった「ぼく」。めがね店で掃除と下働きの仕事をもらったが、本が読みたくてたまらない。やっと職場でフォークさんという理解者を得て、彼の図書館カードを代理で本を借りに来たといって使わせてもらった。図書館では「本当に代理か」と疑われ、字が読めないといってごまかし、あざ笑われるが、読むことによって新しい世界を知る。最初は及び腰だったフォークさんは、「ぼく」がディッケンズやトルストイを読んでいるのを知って励ましてくれるようになる。さらに自由な北の地を目指すところで終わる。のちに黒人作家となったリチャード・ライトの自伝を基にした作品。黒人差別と、その中でも本に飢える思いが切ない。今でも、本がないところに生きている子どもがいる現実があることを思うと残念です。

大人に贈る子どもの文学

 

大人に贈る子どもの文学

大人に贈る子どもの文学

 

猪熊葉子氏が、自分の生い立ちや児童文学に関わってきた来た軌跡を交え、大人もまた児童文学から貴重な宝を得ることを語るように示してくれた本。一番びっくりしたのは、てっきり英文学を専攻していただいたのかとおもいきや、大学で歴史、大学院で国文、しかし児童文学にこだわったところ、日本の児童文学論がなかったため、イギリスでトールキン氏に師事したという経緯だった。また母親である歌人葛原妙子とのぎくしゃくした親子関係、児童文学が文学として認められなかったための苦労など、意外な素顔がわかる。児童文学の紹介については、基本図書が中心だが、一般の方はほとんど知らない作品をメインとして、古典のケストナーや『秘密の花園』などを入れてある。これから児童文学をよんでみようかという方にはちょうどいい入門書。 

ゴールドフィンチ4

 

ゴールドフィンチ 4

ゴールドフィンチ 4

 

 舞台はオランダへ! 描かれた地で違法取引の担保とされている「ゴールデンフィンチ」を奪い返す計画を建てたボリス。一度は無事に取り戻すが、逆襲を受けボリスは銃撃され絵も奪い返される、とっさの反撃でテオは相手を撃ち、親玉を殺害してしまう。別れて逃げたボリスの生死は不明。パスポートは彼にあずけたままで、出国できない。ホテルで苦悩した末に、自首を決意。まさにその日、やっとボリスは現れる。なんと、敵の本拠地をつきとめ、かねてからのテオのアドバイスを容れて、美術警察に連絡。他の多数の盗難絵画と共に、ゴールデンフィンチも当局に取り戻してもらい。多額の報奨金をせしめたのだ。山分けされた報奨金で、不正に販売した家具を買戻し、キッツィとの婚約もなんとなく保留状態となりピッパがかつての爆発の心の傷から彼をも避けている事実に気づく。大円団への予感を感じつつ、テオ自身があの細い鎖でつながれながらも誇りをわすれぬ姿を見せるゴールデンフィンチ(ごしきひわ)と重ねあわされる。だけど、オイ、殺人を悔いて自首しようとした決意はどこへいった! と多少つっこみたく思いながら読了。

ゴールドフィンチ3

 

ゴールドフィンチ 3

ゴールドフィンチ 3

 

 大人になったテオは、ホービーの店で働くようになった。お客が、自分をどう見てもらいたいかを察知するカンがきくテオは、みるみる売り上げを伸ばし、さらに、ホービーが楽しみで修復品をアレンジして作った家具を本物として次々に売りさばいた。だが、帰国したあこがれのピッパは、同居しているイギリス人の男を連れてきて、テオの心を打ち砕く。そんな折、母の死の直後に引き取ってくれたアンディの兄と再会。アンディと父が死んだことを知ってショックをうけ、流されるようにアンディの妹キッツィと婚約する。そのテオに暗雲が、偽家具を売った男が、それをネタに「ゴールドフィンチ」が欲しいと接触してきたのだ。絵が麻薬取引の闇社会で使われていることを非難されてあきれるテオだが、直後にボリスに再会。ボリスが絵の包みをすり替えていたことを知る。さらに、キッツィが、子ども時代にテオとアンディの敵だったトムと実は愛し合っている現場をテオは見てしまう。ねじまがってしまった人間関係、「ゴールドフィンチ」を求めてテオを狙う力がもつれあって物語は進むが、どうやって着地するのか予想不能!

ゴールドフィンチ2

 

ゴールドフィンチ 2

ゴールドフィンチ 2

 

 何をしているか不明な父との暮らし、新しい学校で、テオはボリスと出会う。世界中を鉱山技師の父と渡り歩いてきた不思議な魅力のある少年。恐ろしく頭はいいが、二人は、酒とタバコとドラッグの暮らしへと踏み込んでいく中で、緊密な絆をはぐくむ。あの「ゴールドフィンチ」の絵を持ったままであることは、心の奥で疼いているが、ボリスを殺しかねない暴力をふるう父親を逃れ、テオの家で実質的に暮らしていたボリスだが、恋人ができて微妙に変わり始める。そんな折、父親は賭けで巨額の借金を負った。テオの遺産からなんとか払おうとするが、学費として学校にじかに払うことしかできないと弁護士に阻まれ、酒を飲んで交渉に向かおうとし事故死する。一人となったテオはニューヨークに向かい、ホービーに助けを求める。そこで弁護士から、実は遺産は自由に使えたのだが、君を守るために嘘をついたと知らされ、父親の死に責任を感じる。自分の生活費を支払ってもらい、ホービーと暮らし始めるが、「ゴールデンフィンチ」を返すタイミングを失い、しかも爆発に乗じた絵画窃盗団の逮捕に恐怖を感じる。やっとレンタル倉庫の存在を知り重荷をおろした帰り、かつて母と暮らしたマンションが再開発のため壊されているのを見て、過去が失われていくことに呆然とするテオだった。

ゴールドフィンチ1

 

ゴールドフィンチ1

ゴールドフィンチ1

 

 13歳のテオは、母と学校に向かう途中でふと立ち寄った美術館で爆発に巻き込まれる。母をさがすが、母はみつからず、印象的な少女を連れていた老人が瀕死の状態で倒れているのに遭遇する。老人に命じられ、「ゴールドフィンチ」の絵を包んで鞄にいれ、老人の指輪を受け取り、届けることを約束する。テオは自力で脱出を図るが、一度外に出ると現場から追い払われ、自宅で母に会えると信じて帰宅する。だが、そこで知ったのは母の死だった。美しく聡明な母とテオは極めて親密だっただけに、打撃は大きかった。自分が学校に呼び出されたために母は同行した、と自分を責めるテオ。父親は暴力をふるい、借金を作り失踪中。友人で金持ちのアンディの家に引き取られるが、上流階級のよそよそしさに疎外感も抱いていた。そして指輪を届けに行った先で、老人とともにアンティークショップをやっていたホービーと出会う。少女ヒッパも重傷を負いつつ無事だったことを知り再開する。ホービーは修復家の温かい人柄の人物だった。アンディと暮らし、ホービーに会いに行く暮らしを望んだテオだったが、あろうことか、失踪した父親が恋人とあらわれ、ニューヨークからラスベガスへと引き取られることが決まってしまう。