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図書館に児童室ができた日

 

図書館に児童室ができた日: アン・キャロル・ムーアのものがたり (児童書)

図書館に児童室ができた日: アン・キャロル・ムーアのものがたり (児童書)

 

 「じぶんのかんがえをしっかりもった女の子」アンは、大きくなって、図書館司書となり、児童図書館で働き始めます。やがて、ニューヨーク公共図書館の児童室の設立に関わるほか、世界中の図書館の児童サービスの発展に貢献しました。

当時はまた、女性が図書館で働くことも、子どもが図書館を使うことも、決して当たり前ではなかった。彼女は図書館に掲げられた「しずかに」という看板をはずすことから始めて、よい本を選ぶこと、よい本を出すように出版社に働きかけること、次世代の児童図書館員を養成することまで、ほぼ、アメリカの児童図書館の基礎となる仕事をなしとげ、そして、現在も尊敬を集めている。その一つの結果がこの本といえる。

絵本としてのできはどうだろう。グランマ・モーゼスみたいな素朴系の絵柄は、この本にはあっているかもしれないが、たとえば、「日本」の図書館の絵はちょっとやはりぞっとしない。分類は「絵本」ではなく、「図書館」に置くべきなのかもしれない。

図書館の運営にとっては短いながらも様々なヒントが得られた。登録の際、子どもたちは「図書館のやくそく」に手を置いて重々しく宣誓をするのだという、東京子ども図書館にも受け継がれているというこの儀式は、実はとても有効なのではないか?

いろいろな意味で私たちもまた、原点に立ち返るべきなのだろうと思う。

 

彼女は初めての女性図書館員でも、初めての児童図書館員でもなかったはずで、読みながらそのあたり、少し気になっていたら、巻末にはちゃんと、アメリカにおける児童図書館の歴史がコンパクトに整理されていた。

アン・キャロル・ムーアはビアトリックス・ポターにも会いに行っていて、マーシャ・ブラウンとも一緒に仕事をしたことがある。マーシャはまだ存命だ。児童図書館の歴史というのは長いようで、まだまだ短いし、短いようだが長いのだなあ。