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スピリットベアにふれた島

 

スピリットベアにふれた島 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

スピリットベアにふれた島 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 

 2011年課題図書

15歳のコールは、たびたびトラブルを起こしているが、ついに一線を越えてしまった。同級生のピーターを後遺症が残るほど叩きのめし逮捕される。だが、その背景にはコール自身が、父親からの恒常的な虐待があった。少年院に行くのが当然だが、サークル・ジャステス(地域の人を含め、関係者が集まり、話し合う)を得て、無人島で一年暮らすことで自分を見直す刑というチャンスをえる。だが、コールは島に着き、保護司たちが帰ったとたん、せっかく用意してもらった家や装備に火をつけ、泳いで島からの脱出を試みる。だが、潮の流れでうまくいかない。島に戻ったコールは白いクマに遭遇。怒りを抱えてくまに向かい、逆に倒され、半死状態にされてしまう。腕は折れ、体も裂かれ死とリアルに直面した時、初めて生きたいと願う。身動きがつかないまま、ミミズなど手じかなものを口にし、生き延びようとする。幸いようすをみにきた保護司に救われる。こんどこそ少年院、という中、再挑戦の機会を与えられ、冷たい湖をわたり瞑想すること、怒りの石を転がり落とすことなど、自分の感情のコントロールを学びながら自分を見つめなおす。そして、ついに自分の怒りと向き合い、自分をゆるし受け入れるにいたる。だが、被害者ピーターは鬱になり自殺未遂をくりかえす。ピーターを救うため、コールとピーターの共同生活がはじまる。ピーターの恐怖、そしてついにコールに怒りをぶつけピーター自身も立ち直る。単なる罰ではない、再生の試みの意味を感じるが、それを行うためのエネルギーたるやすさまじいですね。