児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ハックルベリ・フィンの冒険

 

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

 

明らかにトム・ソーヤより面白い。ずばり、本音で生きているハックは、ダグラス未亡人に教育され、それなりに順応もしていくが、ハックの金目当ての父親の登場で、窮地に立たされる。自分が襲われたように見せかけ脱出するようすはミステリーのよう。そして、身を隠した島で、逃亡黒人奴隷のジムと出会い。自由州を目指すジムとともに逃避行が始まる。奴隷は人間ではない、逃亡奴隷を放置するのは盗んでいるのと同じ、という当時の価値観を、ジムとの会話の中で、ごく自然に好意を深め、間違ったことをやってもいいではないか、と心の声に従うハックの姿は、確かに魅力。ただ、さまざまなエピソードの逃亡劇は、ちょっと今読むとテンポが遅くも感じる。だが、最後、ジムを自由にすることに手を貸すことが、地獄へ続く道なら、地獄へと落ちよう!と決意するところは圧巻。最後、トムが出てきてドタバタするところはどうでもいい。空想豊かなトムより、自分の目で見たもの、自分が感じたことをもとに動くハックの柔軟性が魅力。