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夜間中学へようこそ

 

夜間中学へようこそ (物語の王国)

夜間中学へようこそ (物語の王国)

 

 今度中学に進学するゆうなは、初めての中学生活に、ちょっと緊張している。ところがそんな折、おばあちゃんが中学校に入ると言い出した。戦後のどさくさでろくに学校にいけなかったおばあちゃんは、ひらがなをよむのがやっと、今まではおじいちゃんが代わりに読んだり書いたりしてくれていた。だが、3年の介護の後でおじいちゃんが死んでしまったのを機に、もう一度学校にいきたいというのだ。もちろんゆうなとは違う夜間中学だ。家族はびっくり、とくにおばあちゃんの子どものお父さんは、いまさら夜に勉強に出かけて苦労しなくてもと渋い顔だが、いつもひかえめなおばあちゃんの言葉にゆうなとお母さんが味方をする。だが、通学早々、おばあちゃんは足をくじき、一人で電車に乗るのがおぼつかなくなってしまった。両親共働きの中、ゆうなは、成り行きで、おばあちゃんの通学をサポートすると言い出し、夜間中学に足を踏み入れることになる。そこには、やはり高齢のおじいちゃんや、ゆっくりとしか理解できない女の子、不登校の男の子がいるが、それ以上に多いのが、日本語を学びに来ているさまざまな国の人たちだ。徐々に生徒たちと仲良くなる中で、昼間は働いていることに驚いたり、戦争とはどういうことだったかを知る。ある意味、いかにも、な題材だが、まっさらなゆうなの視点のおかげで気持ちよく読める。