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天才ルーシーの計算ちがい

 

天才ルーシーの計算ちがい (文学の扉)
 

ルーシーは8歳の時に雷に撃たれたせいで数学の天才になってしまった。後天性サヴァン症候群というらしい。その代わりに極端な潔癖症や文字を読む前に文字数を数えないと気が済まないなどこだわりがでてしまった。学校にうまく適応できなくて自宅で勉強を続け、12歳で高校卒業の資格を取ったのだが、おばあちゃんが突然地元の中学に通わせると言い出した。ママは死んでしまったし、パパはいないし、ルーシーにはおばあちゃんとポールおじさんしかいない。おまけにおじさんは仕事のせいでめったに会いにこれない。おばあちゃんはルーシーには友だちが必要だという。パソコンの中の数学の友だちだけではダメだというのだ。いやいや始まった中学生活。できるだけ普通の子に思われたくて、数学の成績はおさえた。なぜかいきなり近寄ってきたウィンディはおしゃべりで活動的。そしてリーヴァイはいきなり数学のカンニングをされて喧嘩をした相手なのに、なりゆきで3人で学校の課題をやることになってしまった。ウィンディのアイディアから犬の保護センターに行くが、ルーシーはそこで犬の種類・年齢と引き取られるまでの日数の相関関係データと一匹の捨て犬パイに心惹かれてしまう。人間関係を少しづつ理解していくルーシーの姿は、予測できる展開ながら、読んでいてうれしくなる。ずっと隠していた自分の姿を打ち明けるラストまで、楽しく読める作品。