アイヌの昔話 カムイを射止めた男の子(イソイタク2)
発行所:公益財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構
発行日:2015年3月16日
鳥、炉ぶち、小鍋、人の魂を奪い隠してしまう悪いカムイなど様々なカムイ(神)が出てくる3話。
いじめられていた貧しい男の子の放った矢を喜んで受けたまだら鳥のカムイが、丁寧な祈りをささげてくれるその子の家の守り神となり富み栄える表題作。次の「月に閉じこめられたなまけ者」は、母親が語り手。「まあ、きいてくださいな。うちの子ときたら、とんでもないなまけ者。」と、立ち話のような調子で始まる。題名のとおりの内容だが、母親が水汲みから帰らない息子を探して川で尋ねまわる魚が、ウグイ、サクラマス、イトウ、サケと北海道らしい。「小鍋の教えでしあわせになった娘さん」では、村長の息子に見初められた貧しい娘が、悪い女のカムイの仕業で死んだ息子の魂を、欠けた小鍋のカムイの進言で取り戻し、嫁に迎えられる。
挿絵で女性の手の甲に薄く模様が描かれているのが気になって調べてみると、地方によって女の子は「初潮を迎える頃から、口の周りや手の甲にいれずみを入れた」*そうです。口にも?と思い挿絵を見直すと、確かにひげのように色が付けてあります。また「小鍋の~」の最後の場面で、年老いた主人公が板片のようなものを口にくわえて糸を持ちながら吹いている様子でそれを子どもたちが笑顔で見ている挿絵があります。特に文章には出てこないのですが、ムックリという竹製の楽器を演奏しているようです。シリーズ4巻目の解説で、再話やイラストの作成に際して、衣服や住居、民具、人物の仕草などについて綿密に資料にあたっていることが書いてあり、せっかくなので巻末に解説があると良いと思いました。
*アイヌ民族博物館 http://www.ainu-museum.or.jp