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ブラジルのむかしばなし1

 

ブラジルのむかしばなし 1

ブラジルのむかしばなし 1

 

 日系ブラジル人が多く暮らす愛知県豊橋市の小学校での語りの活動から生まれたシリーズの1巻目。ブラジルの昔話3話と、「フェジョアーダのうた」。裏表紙から読むとポルトガル語で楽しめる。ブラジル在住経験のある編者平田美恵子さん作詞作曲の歌は、ブラジルの煮込み料理フェジョアーダの作り方を6番まで歌いこんでおもしろい。
1話目「カメの笛」は、ヒョウをずる賢くだますカメの話。カメが吹く笛の歌(フィン、フィン、フィン・・・)が楽しい。ここでのカメはポルトガル語のJabutiで、山に住む大きな陸ガメのこと。2話目の「アマゾンのハス」は、短く詩的な美しさが味わえる。月夜の晩に星を眺めながら、ある部族の酋長が子どもたちに語って聞かせる。昔、美しくたくましい騎士である月に恋したインジオの娘たちは、月と結婚して星になった。しかし若く美しいある娘は、森の湖に映った月を騎士だと思って飛びこんでしまう。月は娘をあわれに思い、アマゾンに咲くオオオニバスに変えて水の中で輝けるようにしたのだった。3話目「いっしょにくらせなかったシカとヒョウ」は、お互いの存在を知らずに交互に作業しながら1つの家を建てたシカとヒョウが、完成した家で出合い一緒に暮らすことにする。しかし、お互いの食事をみて警戒するようになり、結局2匹とも家を逃げ出してしまうという話。