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ドリトル先生の郵便局

 

 

ドリトル先生の郵便局 (岩波少年文庫 (023))

ドリトル先生の郵便局 (岩波少年文庫 (023))

 

 

年末、実家で時間があるので一年生の娘に読んでやった。一人で読むのは無理だけれど、読んであげられれば聞くことはできる。もっとも、第一部が終わるまでに2時間くらいかかったけれども。奴隷商人の追跡とか、最初のうちは結構波乱万丈があって、ハラハラドキドキしながら聞いている。そういう話だったっけなあ。

概要

動物のことばを話すことができる、ドリトル先生のおはなし。アフリカに休暇ででかけた帰り道、ひょんなことからファンティポ王国の郵便事業の改善に携わることになってしまったドリトル先生。鳥たちを動員して、世界を結ぶツバメ郵便を開設することになる。この郵便事業の一部始終と、郵便局のつれづれにみんなが語ってくれたお話、最後は、ノアの大洪水を体験した大カメ、ドロンコとの出会いが描かれる。

ドリトル先生物語全集の第3巻だが、おはなしとしては「アフリカゆき」につづく一連のサーカスのおはなし(サーカス、キャラバン、緑のカナリア)の後、トミー・スタビンズが登場する「航海記」の前に位置し、ずっとのちの「秘密の湖」の伏線にもなっている。

感想

子どものころ、結構この巻は好きだった。航海記、動物園につぐ位に。ストーリーとしては、一本のおはなしというよりも、寄り道が多く、あれもこれも盛り込まれていて、もたもたした感じを受けるかもしれないが、昔は全然気にならなかった。ドリトル先生のお話によく出てくる話中話の形式も、とても楽しんだ。

郵便局という組織が、今思うよりも、ずっと重要性が高く、いわば文明の象徴であった時代の物語で、その文明組織を思うがままに運営監督するというのは、男の子の夢だったのかもしれない。チャペックの「長い長いお医者さんの話」にも郵便小人の話があるが、いまや郵便局は、宅急便やメールの陰に隠れて、とっくに「役所」ですらなくなってしまっている。今の子供にその特別な感じは伝わるだろうか。ああ、でも、鉄道が今でもその地位を保っているのだし、それほど悲観はしなくてもいいかも。ともかくも、ツバメ郵便の驚くべき配達速度によって、夕方出した手紙の返事が翌朝には届く、といったことへの驚きを失った私たちは幸福なのか、不幸なのか。

一緒に聴いていた妻は、船の用語とかちっとも分からないじゃない、と文句を言う。HMS(Her Majesty's Ship 英国海軍軍艦の略語)とか、舷側とか、碇泊とか。しかし、それは順序が逆だ。こういう本をいろいろ読んで、私は船の用語を知ったのだ。