フリードマンはADD(注意欠陥障害)をかかえていて、ちょっとしたことが常にひどく気になってしまう。合間に通級指導教室で一息ついてほっとしている。いつもイジメのターゲットにされて、体育のサッカーではわざとふっとばされることが多い。なのに、転校生の女の子ヘザーが救ってくれた。背が高く、男の子よりパワーがある堂々とした女の子。クラスの男の子も女の子も彼女を微妙に敬遠するが、フリードマンには救いの神だ。そんな折、通級指導教室の担任でもあるT先生が、陸上部クロスカントリーのチームを作るというので誘われる。フリードマンは運動は全然ダメなのに、ヘザーも入るというのにつられるようにして入るのだが、もちろんろくに走れない。すぐへばる、ピストルのスタート音が恐怖で、固まってしまう。ダメダメで、逃げたくなるのだが、他の仲間やなによりヘザーの励ましでなんとか続けるだけは続けていく。高齢者施設から脱走してきたおじいちゃんは、彼を「スーパーヒーロー」だという。自分はそんな人間じゃない、ピストルの音さえ怖いと反論するフリードマンに対し、耳栓が必要なのは「おまえがほかの人よりもよく聞こえるからだ。それにほかの人よりよく見えるし、ずっとたくさんのことを感じとる。おまえのそういうところが、おれは大好きなんだよ。」と語りかける。トップランナーにはなれなくても、少しづつ自分の記録を更新していくフリードマン。強いと思っていたヘザーの悩みに気付き、彼女を助けたいと願う。特別なことはできないけれども、誠実で(でいながら、ヘザーの敵討ちをバッチリ成功させる!)自分らしく前に進むフリードマンの生き方は、素直に共感できる。いわゆる感想文の書きやすい本であるだろうが、そう簡単にまとめられない魅力が同時にあると感じられてオススメ。