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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

鹿の王 水底の橋

 

鹿の王 水底の橋

鹿の王 水底の橋

 

 姪の病を見て欲しい、前回の黒狼熱事件で親しくなった清心教医術師真那の依頼を受け、オタワル医術の天才ホッサルとそのパートナーミラルは真那の故郷に向かった。だが、帝国はおりしも跡継ぎ問題で揺れていて、次期後継ぎと目される比羅宇候、由吏候の2名も鳴き合わせ行事のために郷を訪れていた。そして比羅宇を狙ったと思われる暗殺事件が発生。真那と彼の乳母兎季が彼が食べるはずだった魚を食べたことで死の淵をさまようことになる。ホッサルの祖父であるリムエッルの陰謀と真那の祖父安房那候のたくらみを疑いながら、二人は何とかして真那たちを救おうとする。そして姪の病も。医学とは何か、西洋医学的なオタワル医術と東洋医学のイメージを持つ清心教医術の対立、そして清心教医術の意外な真実と、物語はめまぐるしく展開する。だが、さまざまな駆け引きの中で、ミラルの一途な思いやりが鮮やかな解決につながり、彼女自身の幸せの扉を開いていくラストはさすが。何かと対立をあおられる現代の中で、互いを理解する道を拓いて見せた上橋氏のこの物語を子どもたちにもぜひ読んで欲しい。