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ネルー 父が子に語る世界史 5 民主主義の前進

 

父が子に語る世界歴史 5 [新装版]: 民主主義の前進

父が子に語る世界歴史 5 [新装版]: 民主主義の前進

 

 ペルシャ帝国、イタリア統一、ドイツ勃興、マルクス主義の登場、ヴィクトリア時代アメリカの南北戦争アイルランド問題、そして1905年の失敗したロシア革命まで。相変わらず獄中でよくこれだけ世界史を整理して講義できるなぁと、感嘆させられる内容。何より、これらが事件の羅列ではなく、それが誰の思惑で起きたのが、その事件はごく普通の庶民に影響はあったのか? まで述べられているのがすごい。そして、ガツガツと利益を漁る資本主義の発展と、その中で、民主主義といわれているけれど単に新しく台頭してきた階級がそれ以前に支配していた階級に切り込むための手段としての民主主義の動きとして描かれている。この時代、イギリスでは植民地(もちろんインドを含む)からの収奪に寄る好景気で、それが結果的に労働者階級にも若干の恩恵をもたらした。追い詰められなければ動かない大衆が、そこで落ち着いていくという様子は、現代のそこそこの先進国でも見られる状況とも共通するかも。また、アイルランド問題について、アイルランドのアルスター地方にイギリス人が入植してアイルランドを分断した経緯を知って、地図の中のアイルランドの境界線の意味がやっとわかりました。また、南北戦争でのリンカーンの役割についても奴隷解放者ではなく、南北分断を阻止した大統領としてきっちり描いていますが、これは、実際にそうでしょうね。当時は、ソビエト成立間もない時代。ネルーさんの歴史を見る目には、階級闘争の歴史と、その後の労働する人が報われる時代へのあこがれがはっきり感じられますが、事実はその理想とは異なる展開になっていきます。私たちはどうすれば良いのか? 残り3巻、次は第一次世界大戦