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ネルー 父が子に語る世界史7 中東・西アジアのめざめ7

 

父が子に語る世界歴史 7 [新装版]: 中東・西アジアのめざめ

父が子に語る世界歴史 7 [新装版]: 中東・西アジアのめざめ

 

 執筆した1933年直前の的確な世界情勢の分析が収められている。エジプト独立戦争から始まり、植民地支配を表面はやもなく終了しながらも裏で続けようとしたゆえの後遺症が未だに残っていることが良く分かる記述になっていることは恐ろしいほどだ。イラク空爆に寄る被害、アフガニスタンでのプロパガンタ作戦なども、これは最近の出来事? と二重写しに見える。そして第一次世界大戦の戦後処理の破たんと金融恐慌に至る経済のメカニズム、ファシズム台頭とファシズムとは何かの記述がなされるが、持たないものの希望と資本家の期待の中から、両方を満足させるようにふるまいつつ実はすべてを自分のためにつぶして呑み込んでいくファシズムの怖さは現在の政治の中にも明らかに見えるといえるだろう。ロシア革命の成功は、議会を通じて政治を支配する強力な中間階級がいなかったからという解説には思わず納得で、ドイツがロシア革命の影響に寄る動きの揺れ戻しとしてローザルクセンブルグの虐殺につながりヒトラーが台頭していくようすもわかりやすかった。この巻の最後は、科学技術の発展についてである。早く目的地に行ける乗り物を発明しながら行くべき場所を考えていない人類への警告は、今もそのまま通用するが、アイシュタインの相対性理論から始まり遺伝子発見から現在の遺伝子操作を予言する先見性はともかくすごい。次の戦争では塹壕戦ではなく、都市爆撃になるという予言は第二次世界大戦で残念ながらやはりみごとに当たってしまった。未だに学んでいない人類が情けないきもする。