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マウルスとマドライナ

 

マウルスとマドライナ (大型絵本 (24))

マウルスとマドライナ (大型絵本 (24))

 

 ヤギ飼い少年マウルスは、いとこのマドライナの誘いで1人で大きな町へ行くことに。歩いて山を越え、鉄道にも乗るのです。山の危険な道は、慣れていても注意深く進みます。大きな雪原では、用意してきた色とりどりの小旗を雪にさしていきました。帰りの目印にするのです。無事、列車の時刻に間に合い、町の大きな駅でマドライナとのうれしい再会。町では、マドライナのお父さんのティムおじさんがやっている花と果物のお店を手伝ったり、動物園へ行ったりし、飛行場ではかっこいい赤いヘリコプターが頭のすぐ上を飛ぶのも見ました。町の楽しみをすっかり満喫しての帰り道。今度はマドライナとティムおじさんが一緒です。ところが、行きは通れた岩壁の古い小道がくずれ落ちていて、3人は山の避難小屋に足止めです。そのとき雲間から現れたのは、あの憧れの赤いヘリコプター!思いがけず念願かなって、空からマウルスの住む村を見下ろした子どもたちは大喜び。無事に家に帰ることができたのでした。
カリジェ67歳、絵本6冊の最後の作品です。小さな山村に生まれ都会へ出て晩年はまた故郷へ戻ったカリジェの生涯が重なり、自身のかわりにマウルスに旅をさせているようだと、安野光雅氏は言っています。(『カリジェの世界―スイスの村の絵本作家』日本放送出版協会より)    (F)