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沖縄からアジアが見える 岩波ジュニア新書

 

沖縄からアジアが見える (岩波ジュニア新書)

沖縄からアジアが見える (岩波ジュニア新書)

  • 作者:比嘉 政夫
  • 発売日: 1999/07/19
  • メディア: 新書
 

タイトルどおり、沖縄とアジアのつながりについて考察した本。本格的な入門書で中学生だと、こうした問題に関心がないとちょっと難しく感じるのではないかと思う。中国大陸との関係で三十六姓という中国から来た持つと言われる家のルーツが実際に中国で見つかる話や、東南アジアとの共通点、海洋の民であるために海の干潮と関わる月の満ち欠けを意識する文化、女性が霊力を持つ(妹が兄を守るなど)など興味深い。ただ、急速に古い信仰やしきたりがうしなわれつつあるので、現在の沖縄ではすでに失われたり観光行事になってしまっているものもあるのでは、と感じた。また、これは沖縄からアジアを見る視点だが、たとえば弟が他人にそそのかされて美しい姉を呼び出すと、姉が驚いて身を隠したという沖縄の物語と天の岩戸の神話の類似性をあげているが、日本もまたアジアと結ばれた果ての島国であることも思わされた。