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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ショパン 花束の中に隠された大砲 岩波ジュニア新書

 

残念ながら音楽の素養がない私はショパンの曲と言われてもよくわからないのだが、在日2世である著者が自分自身が留学しようとしたときに、再入国許可を得られないという体験をした経験から理解していく過程が胸に迫り、惹きつけられた。ショパンを語る場合欠かせないのはポーランドの問題。他国に分割される、それに抗議の意を示したことで帰国を阻まれ、家族と引き裂かれた。異国でポーランドの魂を伝えようとしつつも、一つ一つの選択が正しいことなのか迷いぬくことになるショパンの悲劇。それは、在日の著者やその他の世界中にいる異国に生きる人たちの苦悩と重なる。若い時から天才として評価されつつも、歴史の中で翻弄され、最後は心臓を故国に持ち帰って欲しいと願うショパン。自分がピアノをやっていたり、音楽に詳しい子だと、具体的な曲のイメージが浮かびさらに楽しめるだろう。