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日本の津波災害

 

日本の津波災害 (岩波ジュニア新書)

日本の津波災害 (岩波ジュニア新書)

  • 作者:伊藤 和明
  • 発売日: 2011/12/21
  • メディア: 新書
 

 津波”―Tsunami”が国際的に通じるほどの津波大国日本。歴史書や調査記録、新聞雑誌記事、個人の体験記などをひも解きながら、歴史的に(古代『日本書紀』に記録されたものから2011年の東日本大震災まで)、地理的に(列島を取り巻く4枚のプレートに沿って北海道から沖縄、そして南米チリなど海外から渡ってきたものまで)、津波被害の状況、前後に起きた現象、メカニズムを解説する。

本書の目的は、歴史から学ぶこと、伝承の大切さを知ることです。人間の寿命に比べたらはるかに長い地球時間(150年おき、あるいは1000年おきなど)で起こる地震津波。地球は鼓動のように同じことを繰り返しているのに人間はそれを忘れてしまいます。生きている間の経験や想定では判断を誤ってしまうことも多いのです。一方、三陸沿岸に伝わる「津波てんでんこ」の言い伝えやラフカディオ・ハーンが原型をつむいだ国語教材「稲むらの火」など、防災教育の伝承が生かされているものもあります。

巨大堤防をつくり、3階以上のビルへ避難すれば安全と想定し安心していても、それを軽く超えてしまうことがわかった津波。人間の営みは自然の一部分であって為すすべはないようでもあるけれど、過去を知って自分のこととして想像し考えて行動することなのだと思います。  (は)