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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

南方熊楠 森羅万象を見つめた少年 岩波ジュニア新書

 

 著者は中国文学専攻。『南方熊楠全集」校訂を行ったという経歴。内容の大部分はアメリカやイギリスでの熊楠の足跡。明らかに異常な行動も多いが、ちょっと前までこうした行動はバンカラとして問題にされなかったのか? 家からの仕送りで暮らし、結局のところは学校というワクに順応できず、経済的な自立は帰国後もできないも同然の熊楠(それでも結婚して子どももいるのは当時という時代と、弟の援助!)。たぶん自閉症スペクトラム症のような感じではなかったかと思われる。実は、読んでいて困惑したのは、熊楠の奇行や苦学については詳しいが、どういう業績をしたのかがよくわからなかったことだった。何となく熊楠というと粘菌というイメージで、そのことは書いてあるのだが、粘菌についてどんなことをしたのか? どうやら科学だけでなく人文的な教養もありそれを融合した論文も書いたこともわかるが、結局何をした人なのかよくわからない。私の読みが悪いのだろうか? 読者の中には、私同様に熊楠への予備知識のない中高生も多いと思う。もう少し、最終的に何をし、どういうところが評価されたのか記述して欲しかった。