『お年寄りにもおはなしを!』で紹介されていた1冊。『お年寄りにも~』の著者山根玲子さんは高齢者施設でのおはなし会を始めたばかりの頃、「保育園のようなことをさせるのか」と70代後半の男性に怒鳴られたが、翌月この絵本を読んだら一転、褒めてもらったのだそうです。淡々とすっきり語る文章がよく、赤羽末吉さんの劇的な絵が圧巻です。中でも、平家方が舟をすすめる海峡を、野に生えるつくし越しに臨む風景。嵐の前の一時の平穏、人事とは関係ない自然が強く美しく印象づけられます。石井桃子さんの文章に秋野不矩さん絵の『いっすんぼうし』に描かれるたんぽぽとつくしも素晴らしい風景ですが、こういった作品を何十回何十年と読めるなら絵本は決して高いものとは思いません。 (は)