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5000キロ逃げてきたアーメット

 

5000キロ逃げてきたアーメット (ティーンズ文学館)

5000キロ逃げてきたアーメット (ティーンズ文学館)

 

 9歳の女の子アレクサの後ろの席にアーメットという男の子が転校してきた。何も話さないし、休み時間になるとどこかへ行ってしまう。でも、気になってなんとか友だちになりたくて、毎日キャンディみたいなちょっとしたプレゼントを渡していた。アレクサにはトム、マイケル、ジョシー(女の子)という友人がいる。みんなもアーメットと仲良くしたいと思ってくれた。まもなくエムジ先生というサポーターの先生がやってきた。エムジ先生のおかげで、やっとアーメットはシリアから逃げてきた難民でクルド語をしゃべり、まだ英語がわからないこと、家族と分かれて一人になってしまったことがわかる。アーメットは爆弾を落とされる中、5,000キロも逃げてきたんだ。でもトムのお父さんは、難民はイギリスにいらないって言っているらしい。クラスのいじめっ子ブレンダンもアーメットを標的にして嫌がらせをしてきた。そんな時、イギリスは新たな難民を受け入れないことになると知ったアレクサは、このままではアーメットは両親と会えなくなると心配する。どうしたらいいか? みんなで作戦会議をして女王に手紙を出して助けてもらおうと思いついて出すが、返事がこない。ついにお城に女王に会いに行こうと決心して、衛兵交代の列に飛び込むが取り押さえられてしまった。だが、その行動が注目されることで事態が動き始める。難民差別をする議員やアレクサたちを過剰に持ちあげようとするマスコミの中でもみくちゃにされるが、最後にはアレクサの両親が見つかりハッピーエンドとなる。難民とはなんのことかわからないまま、アーメットと友だちになりたいと素直に思うアレクサという展開はわかりやすいが、なぜ難民を嫌う人がいるのか?この物語では、ただのいじわるみたいに描かれているので、子ども向きとはいえ、もう少し書く必要があったのではないかと思う。また、解決が女王というのもちょっと安易な気がしてしまった。アーメットは両親に会える見込みができた。だが、注目してもらえない他の人々は? すっきり解決しすぎているのが、逆にちょっと気になってしまった。